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体験実習ルポ③ ~介護保険法の中で地域福祉を行うということ~前回行った社会福祉協議会での2日間の体験実習に続き、先週金曜日は在宅福祉センターという施設で1日限りの実習をした(この施設は地域包括支援センターという位置付けがなされている)。今は、この在宅福祉センターでの実習をもって現場実習に向けた一つの節目を終えたということで、一応の安堵感を得ている。いや、元々実習そのものについて不安など全く感じていなかったので、安堵という感は特にない。ただ、実習はともかく、その後の大学へ提出する報告書で妙な評価をつけられなければというところの不安だけはある。妙な評価、それは勿論試験評定と同じように「不可」「再提出」などという有り難くない評価のことであるのは言うまでもない。目先の目標としての社会福祉士受験資格の取得がすんなり出来ないようでは、精神的にも体力的にもロスが出来るし、何しろ私自身の沽券にも関わるというものである。それだけではなく、これからなお一層に福祉の世界で生きていく上でもこんな実習程度のことで躓いていては、専門職人としてはやっていかれないという思いの方が強いのが正直なところだ。
私が体験実習で2か所を希望しかつその内の1か所に地域包括支援センターを選んで希望したのは、何よりも「地域」の福祉を考えたかったからである。先日のブログで、私は社会福祉協議会(以下、「社協」)での体験実習について記し、その中で社協がこれからの職場として第一の目標であると述べたが、福祉援助というものについて地域レベルでの考察を深めていきたいというねらいの一環では、この地域包括支援センターについて学ぶことも有効であると感じたのである。もっとも、この施設に対する私のイメージは当初は、実像とはまるで異なるものだった。「地域包括」という表現から<高齢者・児童・障害者など福祉の分野を特定せず「地域」の福祉を支援する施設>というイメージがあったのだ。実際には、たとえば今回実習を行った地域包括支援センターが、老人福祉法と介護保険法の双方にまたがる施設であることもあって、老人デイサービスセンター・老人介護支援センターの性格も併せ持っていたことでは、全くもって高齢者福祉分野に位置する施設ということになる。この施設が、他の高齢者福祉施設とどう違うのかと言えば、その事業展開の規模・手法に答えを求めることが出来る。詳しくは、関連するサイトをご参照頂きたいが、私はこの「地域包括」という性格を持った施設において、地域の福祉ニーズを汲み上げて福祉援助をすることの意義について学びたかったのである。例えば通所の福祉サービスを利用しようという対象者やその家族のニーズを職員がどのようにサービス実施に結び付けているのか、その業務の困難さとともにやり甲斐を感じてみたかったのである。勿論、施設の中では個別援助をするのは当然なのだが、私のこれまで携わってきた福祉援助は大体において個別援助に限られていたので、極端に言えば、どうしても「その相手に向き合ってさえいれば良い」的な雰囲気に染まっていたように思い、何かそれを突き抜けていかなければという思いが募っていたのである。個別援助は勿論大切である。しかし、その支援がどういう社会関係の中で展開されていることなのかを余り深く考えてこなかったという反省がある。社会関係の中の個別援助という視点を持つ必要を感じたのは、やはり今携わっている児童相談所の電話相談業務がきっかけの一つである。電話相談業務の場合は、基本的に電話というツールを介した各種の相談支援ということになるのだが、それは極めて個別援助であるに過ぎない。電話をかけてきた相手のニーズを把握してそれに適した支援行動を起こすこと、これが電話相談業務の基本なのである。勿論、この対応業務を行う上では、ケースワーカーたちとの連携が必要なので、これはケアマメジメント及びチームマネジメントと言って良い。しかし、それぞれのケースは独立したものであって、ミクロな世界でしかない。最近はそのことに少しマンネリを感じて、もっと視野を広げて考えたいという気持ちがここで沸き起こってきたのである。本当はもっとましな動機があれば良いのだが、経験不足な私としては現状ではこれが限界であった。
さて、その地域包括支援センターでの体験実習であるが、やはり「百聞は一見に如かず」で、この施設での業務への私の認識の甘さを痛感するものとなった。実習の主なスケジュールは4つ。概要説明のあと、生きがい対応のデイサービスセンターと認知症対応デイサービスを見学し、最後に利用者の見送りとミーティング参加がそれである。ここで感じたことは概ね次の4点にまとめられる。
(1)利用者の平均年齢の高齢化に伴い認知症対応型デイサービスの必要性が高まっているが、相談受付件数や対応実績を見ると、介護保険法改定の影響が色濃いこと(介護予防系相談で要支援者への対応が最多比率になっている)。
(2)指定居宅介護支援事業と地域包括支援センターの2種類の窓口体制を整えてサービス展開がなされているが、介護保険法改定(平成18年度)の影響で要介護認定のハードルが高くなっていること(従来の介護サービスよりも介護予防サービスが優先されやすい現状)。
(3)在宅福祉センターが指定管理者制度(4年周期)により運営主体の変動可能性を持った施設であること(基本的には運営主体が変わってもサービスの質が落ちないように神戸市が指導しているが、施設庁の考え方次第で利用環境が変わる可能性があるため、利用者本人にとっても家族にとっても不安を与えることがある)。
(4)要介護認定による各種サービスの利用料算定が法改定により一層細分化されたことで個別のケアプラン作成が一層難しくなっていること。
私の場合、特に現場の大変さを痛感したのは(4)である。要介護認定で解雇後サービスが決定されるというのは既に理解出来ていたが、利用者の費用負担の計算という作業は思いのほかややこしく、ケアマネージャーの仕事の辛さがよく分かった。計算機片手に計算する作業だけでは無く、本人や家族の希望をきめ細かく受け止めながら、保険法に定められた範囲とのバランスを取るのは至難の業であり、必ずしも希望通りにサービスを提供できないことで当事者とトラブルになる危険性があることは、この仕事をする上では必要な認識事項であることを痛感した。認知症高齢者との交流では、初対面であるにもかかわらず割合に自然に交流が出来たのはまずまず。これはかつての祖母の介護体験が活きたかも知れない。施設の実情について言えば、在宅福祉センターが私の住む地域の場合、指定管理者制度により運営主体が変わる可能性があるというのは、ちょっとした驚きだった。こんな話を一般の人間が聞いたらどう思うかと言えば、「運営主体が変わったらサービス内容はどうなるのか」という不安が出てくるのは当然なことだろう。説明をしてくれた施設長も「このことは指定を受けた法人にとって結構頭の痛いところなんですよ」と言っていた。要するに、指定管理者制度のことなので、指定を受けた法人の当該年度の事業実績・サービス実施環境を精査して、そのまま指定継続となるか他の法人に変更ということになるかということになる。法人としては続けて指定を受けていきたいけれども、それは確実とは言い切れないのだという。財政的に赤字になれば当然、在宅福祉センターとしての事業運営は難しくなるので指定は解除されることになる。そうならないように成果を上げなければならないというところは、シビアなものがある。ただし、施設長はこうも言っていた。「とは言え、私たちとしては福祉を営利優先のビジネスに利用するべきではないという考えがありますし、何よりも利用者にとってどうなのかを丁寧に見つめていくことが地域からの信頼を得ることに繋がるという思いを持っていますから」と。
私はこの施設長の言葉であることを思い出した。それは今年の春に非常勤職員としての勤務の為に面接に行った民間企業のデイサービス施設のことである。そこでの面接で言われたのには「うちで勤務していただく場合、利用者獲得のための営業活動をしていただくことになりますがそれでもよろしいでしょうか。うちは、年間の売上が事業拡張のよりどころなので、利用者獲得の業務は必須なんです」との一言。私がこの面接担当者の一言であっさりとその施設への勤務希望を取り下げたのは言うまでもない。確かに、福祉施設の現実は厳しく、特に事業継続のための経営の昨今の厳しさは深く認識しているところではある。福祉事業と一口に言っても、その裏付けとなる経済基盤が整っていなければどうにもならない。それが例えば、母校の大学のように福祉経営の専門学部を設置する必要にも繋がっているのかも知れないが、それが営利優先第一となると話は別だ。世間を見てみろ、福祉で飯を食う人間の一部が悪いことをしているケースがごまんとあるではないか。そういう人間どもの言い訳は大抵決まって「我々も死活問題抱えているんだ、他社(施設)には負けられないんだ」というものである。こういう言い草を聞くにつけ、「私たちはもう既にグッドウィル・コムスンの事例で勉強済みなのに」という思いになる。営利優先で行う福祉が行き着くところをコムスンはまざまざと教えてくれたわけで、その意味では折口氏は反面教師としての功績はあるのだろう。ともかくも、私はそういう営利優先第一主義の世界で福祉をやろうとは思っていないので、その施設の面接は早々に私から切り上げたのである。このときの体験のことを、実習先の在宅福祉センターの施設長からの説明で思い出したのである。しかし、いずれにしても、介護保険法が出来てからケアマネージャーの業務は煩雑さを増しているとのこと。それに介護負担料の計算一つを取ってみても、最低5年は現場体験を積んでいなければケアマネにはなれないのも頷けるというものだ。施設長の概要説明では、私は特に利用者のニーズの汲み取りについてこだわったため、要介護認定とサービス利用料の計算方法などについて丁寧に解説をしてもらった。施設長がこの分野には疎かった私に本当に根気よく向き合って説明をしてくれたことは有難いことだった。
概要説明の後は、生きがい対応のデイサービスセンターと認知症対応型デイサービスの見学。実は、今回の実習の中ではデイサービスの見学については特筆すべきことは無かった。というのも、介護予防プログラムの活動も認知症高齢者向けデイサービスもほぼ見学前のイメージ通りであったからだ。ただ、午後からのスケジュールでかなりの時間を割いた認知症デイサービスの見学では、担当職員の利用者への接し方がとても丁寧な様子が分かり、嬉しく感じた。何よりも利用者に負担をかけないように配慮した言葉掛け( 呼びかける際には名前で行うことや丁寧語で話をすることなど)や行動援助は、従来見た事のある特養ホーム(10年以上前のことではあるが・・・)の世界とは格段の違いを感じることが出来た。これも施設長の指導が良いからなのだと思ったが、この施設長が母校の大学の先輩であることを思うととても誇らしいし、かつまた私も同じOBの一人であることを心から嬉しく思うと同時に、母校の名に恥じない福祉専門職人になっていかなければならないという意識を改めて強くした次第である。
http://blog.so-net.ne.jp/turbo-s_taniguchi/2008-10-21