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おくりびと 再び…。
 今日は、藤沢まで遠征して藤沢市民オペラ「メリー・ウイドウ」を観る予定だった。地元の駅近くの駐車場にバックで入れていたら、お隣の車にドッカン!ああ、やっちゃった…。車の持ち主を捜し、警察に電話して、保険屋に連絡等々をしていたら、開演時間を過ぎてしまった。これから藤沢にでかけても終わってしまうということで、お休みなのに劇場へでかけない一日を過ごす羽目に…。損害保険は、最大限のものに加入しているので、物損事故でも代車の手配までしれくれるので、心配はないのだが、オペラに行けなかったのがショック。お相手の方は、2年に一度ぐらい駐車場でこすられてしまうのだけれど、大概は当て逃げなのだとか。「助かりました」と逆に感謝されたりして、ちょっと面食らう。普通は逃げるのか?

 さて、このところ天使が毎日必ずすることは、血圧の測定、プールで1,000メートル泳ぐこと、そしてチェロで「おくりびと」を弾いてから会社に出勤すること。地元のシネコンでは、上映予定ではなかったが、意外なヒットで急遽上映することになったらしい。同じ映画を二度も観ることは少ないのだが、この映画は別。峰岸徹も亡くなったことだし、友人のCypressさんがおっしゃっていた本木雅弘のチェロ演奏がCGで首だけすげかえたものかどうか見届けたかったからである。

 チェロの方は、アップ以外は確かに顔をすげ替えていたようだった。後半のソロで弾く場面のぎこちなさと第九の第四楽章は別人なのは間違いなさそう。いくらなんでも543小節目を素人があんなに達者に弾けるわけなかったのである。
それでも、クリスマスの場面の「アヴェ・マリア」や胎教のために弾く?ピチカートの「ブラームスの子守歌」などは、彼自身が弾いていた模様。音は別にしても。

 映画は納棺師になってから2ヶ月。妻に去られ迷いながら仕事を続ける主人公の場面から始まる。最初の仕事は、自殺した性同一障害の若い男性である。天使の友人には、そうした彼らを笑い物にするのが許せないという意見もあったが、全体を通してみると、そんなに底の浅いエピソードではなかったことがわかってくる。映画には両親よりも早く亡くなくなってしまった子供が幾度か登場する。性同一障害の男性。暴走族の情婦?だった少女。そのいずれもが、両親からその存在を受け入れられていない。

 性同一障害の男性は、納棺師の手を経て初めて、父親に「自分の息子」だと認められ受け入れられる。納棺師の仕事が、その人が本来持っている姿を蘇らせたからである。それに対比するエピソードとして、主人公の生き別れになった父親の死に際して、自らが父親の納棺をする場面がある。瞼の父どころか、どんな顔だったかも思い出せなかった主人公が、自分の仕事によって、薄汚れた老人から、幼い頃に見た父親の顔の記憶を取り戻す瞬間の感動は、言葉に言い表せないほど大きかった。親が子供を認め、子供が親を認めたのだ。

 昨年100歳で大往生した天使の祖母が、美しく蘇ったのも理由のないことではなかったのである。昔のこととて、天使の母親を嫁いびりして、何度も入院させたような鬼姑だった祖母。母親は、通夜も告別式も欠席するほど憎んでいたが、本当は優しい人だったのを天使は知っていた。時々里帰りしては、祖母の爪を切ってあげたり、足を洗ってあげたり、そのたびに、年老いた祖母の孤独を思って天使は泣いていた。「ありがとう」といって微笑む祖母は、けっして鬼ではなかったはずである。納棺師によって蘇った祖母は、十代の少女のような美しさを取り戻していた。

 前の晩、NHK・BSでやっていた「天国と地獄」に出ていた山崎努が好助演。ずいぶんと歳をとったものだけれど、こうしたクセのある役には抜群の上手さをみせる。脇役がいいのは勿論だが、なんといっても本木の主人公の演技は素晴らしい。独白で迷いに迷い、自分に問いかけ続けていた主人公の成長物語としても秀逸な映画である。

 監督の細部へのこだわりも素敵だった。パブロ・カザルスのシューマンのチェロ協奏曲や彼自身の指揮によるのレコードジャケットがさりげなく置かれていたりして嬉しがらせてくれた。1961年、カザルスは日本を訪れているので、主人公の父親が、その演奏を聴いていて息子にチェロを習わせたいと思うのもあるかなあと想像したりした。

弟子平井丈一郎を帯同し、カザルスが指揮をした記録は以下の通り。

4月11日:東京交響楽団(日比谷公会堂)
ベートーヴェン;交響曲第4番、シューマン;チェロ協奏曲、ラロ;チェロ協奏曲
4月14日:東京交響楽団(日比谷公会堂)
モーツァルト;交響曲第29番、ボッケリーニ;チェロ協奏曲、ドヴォルザーク;チェロ協奏曲
4月20日:京都市交響楽団(京都会館第1ホール)
ドヴォルザーク;チェロ協奏曲(演奏会前半は、京響の常任指揮者チェリウスが指揮)

主人公の父親は、日比谷公会堂の演奏会を聴いていたのかも。
http://theater-angel.blog.so-net.ne.jp/2008-10-19

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